抄録
植物特異的な蛋白質へのO-結合型糖鎖修飾の最初のステップは、蛋白質中のプロリン残基のヒドロキシプロリンへの変換であり、その反応には、1型または2型のプロリン水酸化酵素(P4H)が関与する。また、植物を用いて異種蛋白質を効果的に合成させるためには、蛋白質への植物特異的糖鎖修飾の抑制が必要である。そこで本研究では、O-結合型糖鎖修飾を一カ所受ける蛋白質スポラミンを発現する形質転換タバコを用い、P4H阻害剤の処理や、P4Hの発現抑制が、植物の生育と、スポラミンへのO-結合型糖鎖修飾に与える影響について解析した。
P4H阻害剤であるα,α’-dipyridyl処理により、植物体の生育は大きく阻害された。一方、P4Hの恒常的な阻害を図る目的で、1型P4Hに対するRNAiコンストラクトと、2型P4Hに対するRNAiコンストラクトを発現させた植物体を作成したところ、部分的にこれらの発現が抑制されている植物体を獲得することが出来た。これらの植物体では、阻害剤処理と異なり、植物の生育阻害は認められなかった。次いで、これらの植物体とスポラミン発現植物体を掛け合わせた個体を作成した。本報告では、これら処理の生育に対する影響及び、阻害剤処理やRNAiコンストラクトを導入した個体における、スポラミンの修飾程度を指標とした、O-結合型糖鎖修飾への影響について報告する。