抄録
ショ糖は高等植物において炭酸同化産物の転流で用いられる必須の物質である。こうした転流の過程でショ糖輸送体が重要な役割を果たしていると考えられている。植物細胞内でのショ糖輸送の制御機構を解析するため、タバコのショ糖輸送体NtSUT2とNtSUT4の細胞内局在の解析を、タバコ培養細胞BY-2株を材料として行った。まず始めにそれらの抗体を作製し、ショ糖密度勾配遠心を用いた細胞分画法により局在を解析すると、NtSUT2はゴルジ体と同様の分布を示したのに対し、NtSUT4は液胞膜に相当する画分に回収された。またこれらとGFP、RFPの融合体をタバコ培養細胞内で発現させたところ、NtSUT2はTGNのマーカーであるSYP41と、NtSUT4は液胞膜のマーカーであるSYP21と共局在を示した。また、NtSUT2は糖、窒素、リン酸飢餓で分解されるのに対し、NtSUT4は糖飢餓のみで分解されることから、これら2種の糖輸送体は異なった分解制御を受けていると考えられた。さらにNtSUT2の分解はオートファジー阻害剤であるE-64や3-methladenine存在下で分解が抑制されたことから、その分解にオートファジーが関わる可能性がある。現在、この分解機構に関して詳細な解析を進めている。