抄録
オジギソウは接触や電気などの刺激に反応し、葉を約5秒で折り畳む。このお辞儀運動の分子メカニズムはほとんど明らかになっておらず、適応進化における意義も不明である。これらの問題を遺伝子レベルで解明するため、我々はオジギソウの形質転換技術を開発した。まずオジギソウの再分化系を確立するため、分化した組織からのカルス誘導とカルスからのシュート誘導条件を検討した。その結果、切断した子葉をNAA 0.01 mg/l、BAP 2 mg/lを含む1/2 MS培地で培養するとシュートを誘導できることがわかった。さらにこのシュートを切断し、植物ホルモンを含まない1/2Hoagland培地に差し込み、培養することにより、根を誘導できることがわかった。次に、アグロバクテリウムの感染方法について、菌株、植物体の育成条件、感染時の処理条件の検討を行った。その結果、菌との共培養開始時に、子葉にメスで傷を付けて超音波処理を行い、スーパーバイナリーベクターpSB111を保有するLBA4404株を感染させた場合に、最も高効率で感染が起こることがわかった。現在までに、GFP遺伝子を導入したオジギソウのカルスを作ることに成功し、顕微鏡下における観察でGFPの蛍光を確認できた。以上の成果を組み合わせ、遺伝子導入されたカルスからシュートおよび根を誘導することによって、形質転換オジギソウの作出を試みており、その結果を報告する。