抄録
キャピラリー電気泳動-質量分析装置CE-MSによる主要代謝物質のプロファイリングに有効に利用できるフューズドシリカキャピラリーカラムを用いた陰イオン性代謝物質測定のための2つの分析条件を検討した。第一は糖リン酸、有機酸、ヌクレオチド及び補酵素などの代謝物質を網羅的にかつ短時間に測定することを目標にした分析条件であり、泳動用緩衝液にギ酸アンモニウム(pH8.0)を用いることにより、一般的なポリマーコーティングキャピラリーを用いた場合に近い17分以内で35物質から成る標準試料の測定が可能であった。この分析条件において、質量電荷比m/z=229と259における構造異性体由来の複数のピークの分離が十分に得られないシグナルを対象に、高解像度で分離検出するための第二の分析条件を設定した。泳動用緩衝液に酢酸アンモニウム(pH10.0)とメタノールの混合溶液を用いた条件によりこれらの構造異性体(R5P、Ru5P、F6P、G1P、G6P、Gal1P、M6P)を分離同定することが可能であった。後者の分析条件でのヒメツリガネゴケの抽出液の測定においては、m/z=259に連続して検出された3つのピークが、M6P、G6P、及び未知物質のものであることを同定した。これらの結果とシロイヌナズナの葉の抽出液を測定した結果を基に、陰イオン性代謝物質のプロファイリングにおける2つの分析条件の有効性と実用性を議論する。