抄録
実質的同等性とは、食用としての安全性の評価が可能とされる遺伝子組み換え(GM)作物と、これまで食用として用いられてきた作物とを比較・判断する際の基準概念である。代謝物群の変化を捉える研究であるメタボロミクスはあらかじめ測定対象を特定せずに行う分析方法であるため、本評価への利用が世界中で試みられている。そこで我々は、3種類のクロマトグラフ技術に飛行時間型-質量分析計(TOF-MS)を組み合わせた装置によるMS-based metabolomicsにより、GMトマトの実質的同等性評価法を確立し、本法を用いてGMトマトの実質的同等性評価を行った。
評価対象として、栽培種トマト(cv. Moneymaker)、本品種にミラクリン遺伝子を導入したGMトマトを使用した。評価期間は3年、栽培法は2種類を適用した。なお、評価に用いる部位は可食部である果実とした。異なるプラットフォームから得たデータを自動的に統合するため、データ統合プログラム「MetMask」を開発・利用した。それぞれの収穫年で得られたサンプル群に対して統計解析を行い、遺伝子導入により起こった代謝物群の変動幅を検定した。その結果、ミラクリン過剰生産トマトの代謝プロファイルは、Moneymakeのものと有意差が認められず、Moneymakerと実質的に同等であると見なすことができると結論した。