日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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メタボロミクスによる様々な環境条件下における細胞内化合物の局在性の解明
*及川 彰菊山 宗弘三村 徹郎斉藤 和季
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p. 0173

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抄録
細胞内における化合物の局在性は,代謝酵素や受容体などのタンパク質の局在情報から推測されているに過ぎず,実際にこれを直接検出した例は少ない.我々は昨年までの大会で,巨大な細胞であるオオシャジクモ節間細胞から単離した液胞及びサイトプラズムを,イオン性化合物の悉皆的解析に優れたCE-MS(キャピラリー電気泳動/質量分析装置)を用いたメタボローム解析に供することによって,単一細胞内における液胞とサイトプラズムでの化合物の局在について報告した.本大会では,様々な環境条件下における細胞内化合物の局在性について報告する.光条件を変化させると細胞内の化合物濃度が変化するが,リンゴ酸などの化合物は液胞内では濃度が変動する一方,サイトプラズムではほとんど濃度が変わらなかった.これはこれらの化合物が必要に応じて液胞膜を移行し,サイトプラズムにおける化合物濃度を調整していることを示唆しているのかもしれない.また,顕微注射技術を用いることによって,細胞内における化合物の移動を直接検出することが出来た.今後は温度やpHなどの環境条件の変化が細胞内での化合物の挙動に与える影響を調べる予定である.以上の研究により,化合物が細胞内のオルガネラに局在していること,および必要に応じてオルガネラ間を化合物が移動していることを直接証明できると考えられる.本研究は,イノベーション創出基礎的研究推進事業の支援を受け実施された.
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© 2010 日本植物生理学会
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