日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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液胞膜と細胞膜の融合による植物の感染防御機構
*初谷 紀幸岩崎 慎治田村 謙太郎近藤 真紀冨士 健太郎小笠原 希実西村 幹夫西村 いくこ
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p. 0176

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抄録
液胞は植物に普遍的なオルガネラであり、細胞全体積の90%を占める。液胞内には細菌などの外敵の侵入に備えて、抗菌物質や分解酵素を多量に蓄積している。一方、侵入した細菌は細胞間隙で増殖し植物の生命を脅かす。これまで、どのように植物が細胞内の抗菌物質を使って細胞外の細菌を攻撃しているのかは謎であった。私達は、非病原性の細菌をシロイヌナズナの葉に感染させた際に誘導される防御応答を解析し、感染を受けた細胞が積極的に液胞膜と細胞膜を融合させることによって液胞内の抗菌物質を細胞外に放出し細菌を攻撃するメカニズムを見出した。このとき同時に液胞内の分解酵素を放出し細胞は過敏感細胞死を起こす。健全葉の細胞では液胞に局在する分解酵素が、細菌の感染を受けた葉では細胞間隙液からも検出された。また、細胞間隙液の抗菌活性と細胞死誘導活性を調べたところ、感染葉では健全葉に比べてどちらの活性も優位に高い値を示した。感染に伴う膜融合と細胞死がプロテアソームのRNAi株において阻害された。興味深いことに、プロテアソームのRNAi株ではプロテアソーム活性とともにカスパーゼ-3様活性も低下していた。この結果は、植物で見出されていたカスパーゼ-3様活性の正体がプロテアソームであることを示している。以上の結果から、植物はカスパーゼ-3様活性をもつプロテアソームを介して膜融合をともなう防御戦術を発達させてきたことが示唆される。
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© 2010 日本植物生理学会
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