抄録
植物の感染応答分子機構の解析を目的に,Ralstonia solanacearum(Rs)接種タバコよりRs応答性遺伝子の単離・機能解析を進めている.本研究では酵母の脂質代謝に関わるSec14Pと相同性を持つNbsec14P(Nicotiana benthamiana sec14P)に着目した.Nbsec14Pの発現は非病原性Rsの接種で強く誘導された.Nbsec14Pは酵母の温度感受性変異株の生育能の欠損を相補した.Nbsec14Pサイレンシング植物では,過敏感細胞死への影響は認められなかったが,病原性・非病原性Rsの増殖および,病原性Rsで誘導される萎凋症状の発現が促進された.サイレンシング植物では,非病原性Rs接種で誘導される防御関連遺伝子であるPR-4,EREBPの発現が抑制された.また、Nbsec14Pサイレンシング植物では,Phospholipase C,D活性が有意に低下した。以上の結果から,Nbsec14Pはリン脂質代謝を介して,Nicotiana植物の病原細菌に対する防御応答を正に制御していることが示唆された.