日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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RNAiによるジャガイモファイトアレキシン合成遺伝子の機能解析
*吉岡 美樹安達 郁子吉岡 博文
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p. 0180

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抄録
ジャガイモのファイトアレキシンであるリシチンはイソプレノイドであり,PVS (potato vetispiradiene synthase) は生合成における鍵酵素である.これまでに,分子レベルで感染におけるリシチンの役割が調べられた例はない.PVSは多重遺伝子族を形成しており,PVS1~4を単離している.RNAi法によってこれらPVS1~4をノックダウンした遺伝子組換えジャガイモを作出した.この塊茎にジャガイモ疫病菌非親和性および親和性レースを接種したところ,野生株と比較して非親和性レース接種ではHR細胞死が塊茎全体に広がり,親和性レース接種では菌糸の著しい蔓延が観察された.両レース接種区において塊茎からファイトアレキシンを経時的に抽出したところ,RNAi個体では蓄積が認められなかった.葉組織に親和性レースを接種したところ,RNAi個体では病徴が早く現れる傾向が観察された.非親和性レース接種葉では,野生株において菌侵入直下の表皮細胞でHR細胞死が観察されたのに対し,RNAi個体では二次菌糸が伸長して葉肉細胞でHR細胞死が観察された.以上の結果から,ジャガイモ葉組織においてリシチン蓄積が報告された例はないが,ファイトアレキシンは塊茎のみならず葉組織においても防御応答の一端を担っており,他の防御関連因子と複合的に作用することで抵抗性を発揮するものと考えられた.
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© 2010 日本植物生理学会
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