抄録
病原菌は植物に感染する際、エフェクターと呼ばれるタンパク質をType III secretion system (TTSS)を用いて直接植物細胞内へと分泌し、植物の抵抗性反応を抑制し、宿主に感染することを可能にしてきた。本研究ではエフェクターの標的が植物免疫因子であると考え, イネ白葉枯病菌T7174R株のエフェクターを用いてイネ免疫機構を解析することを目的としている。
これまで我々は10種類のエフェクターをそれぞれイネで過剰発現させた形質転換体を作出し, TTSSを欠損したイネ白葉枯病菌HrpX変異株の接種実験をおこなった。その結果、野生型イネでは、宿主のPAMPs抵抗性によりHrpX変異株による病徴が観察されないのに対し, 4種類のエフェクターを過剰発現させたイネにおいて病徴の拡大が確認された。そこで、この4種類のエフェクターに対象を絞り、その機能を詳細に解析することとした。これまでに解析により、エフェクターが、エリシターによって誘導される防御遺伝子の発現を抑制することが明らかとなった。更に、酵母ツーハイブリッド法により、エフェクターのイネ相互作用因子を探索し、その候補として転写因子や受容体型キナーゼなどを同定した。本発表ではこれら4種類のエフェクター過剰発現植物並びにエフェクターの解析結果について報告する。