抄録
イネにおいて、低分子量Gタンパク質であるOsRac1は植物免疫反応を制御していることが明らかにされている。これまでにOsRac1の相互作用因子を同定し、シグナリングネットワークを解明してきた。本研究では、OsRac1がイネ細胞内で複合体として存在しているのか、その複合体が植物免疫反応にどのように関わっているかを解明することを目的とした。
恒常活性型又は恒常非活性型OsRac1を発現するイネ培養細胞のタンパク質を抽出後、ゲルろ過によって分画した。その結果、恒常非活性型に比べて恒常活性型では大きな複合体を形成することが確認された。また、野生型OsRac1にエリシター処理を行ったところOsRac1は処理後3-10分で高分子量側にシフトし、20分以上処理し続けると低分子量側の複合体が多くなることを確認した。OsRac1と相互作用し、植物免疫に関与するタンパク質について解析を行ったところ、OsRac1の活性型及びエリシター処理に関わらず、常に同じ大きさの複合体を形成していた。そして、エリシター処理によって野生型OsRac1が活性化していくことを生化学的に証明した。
以上のことから、OsRac1は活性型としてDefensome複合体中に存在し、植物免疫シグナルを下流に伝達していくという可能性を示唆している。