日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
Bovine 型大動脈弓における胸部大動脈ステントグラフト内挿術後に発症した脳梗塞を伴う逆行性 A 型大動脈解離の1救命例
石田 圭一佐戸川 弘之高瀬 信弥佐藤 善之瀬戸 夕輝五十嵐 崇山本 晃裕藤宮 剛横山 斉
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2019 年 48 巻 5 号 p. 341-344

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抄録

胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)後の逆行性A型大動脈解離(RTAD)は致死的な合併症である.今回われわれは,bovine型大動脈弓(bovine aortic arch)を有する解離性胸部大動脈瘤に対するTEVAR後に,脳梗塞を伴うRTADを発症し,緊急手術にて救命し得た1例を経験したので報告する.症例は54歳,女性.Bovine aortic archを有し,左鎖骨下動脈直下にentryを認める慢性解離性胸部大動脈瘤が増大してきたため,entry閉鎖目的に中枢側landingをzone 2とするTEVARを施行した.右腋窩-左腋窩動脈バイパス術ならびに左鎖骨下動脈コイル塞栓も併施した.術翌日に右上下肢の不全麻痺が出現し,MRIで脳幹梗塞,CTで逆行性A型大動脈解離を認め緊急手術を施行した.術中所見でbovine trunk起始部の大湾側に短軸方向のtearを認め,同部よりベアステント先端が突出していた.手術はentry切除を行い部分弓部大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で術後37日目にリハビリ目的で転院し,その後麻痺症状は消失し近医外来に通院している.

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