抄録
シロイヌナズナ発達種子におけるアブシシン酸(ABA)の蓄積量を、LC-MS/MSを用いて詳細に解析した。野生型とABA欠損変異体aba2の掛け合わせF2種子におけるABA量を個別に分析することにより、発達中期に種子中に蓄積するABAは主に母体由来組織で合成されることを明らかにした。しかし、この時期にはABAは主に胚に蓄積することから、胚以外の組織で合成されたABAが胚へ移動している可能性が考えられた。一方で種子形成後期には、中期に比べると少量ではあるが、ABAは主に胚もしくは胚乳で合成されることが明らかになった。マイクロアレイ解析により発達種子中で内生ABAにより発現が制御される遺伝子を同定し、ABA欠損の程度が組織間で異なる変異体における発現量を比較した。その結果、種子全体におけるABA量と遺伝子発現が必ずしも一致せず、異なる組織で合成されたABAが下流の遺伝子発現を特異的に制御している可能性が考えられた。