抄録
シス型ゼアチン(cZ)は、高等植物において、トランス型ゼアチン(tZ)やイソペンテニルアデニン(iP)と比べて活性が低い、もしくは不活性型と考えられてきたサイトカイニン(CK)分子種である。しかし近年、いくつかの植物種におけるcZ型CKの蓄積や、cZを認識するトウモロコシのCK受容体が報告された。イネでは、cZ型CKがプレニル側鎖の酸素原子において配糖化(O-グルコシル化)されたcZOGやcZROGが、高蓄積する。本研究では、イネにおけるcZ型CKのO-グルコシル化酵素の同定と生理機能の解明を目的とした。データベース検索および組換えタンパク質を用いた活性測定により、イネのUDP-グルコシル転移酵素族に属する3つのタンパク質が、in vitroでcZおよびcZRのO-グルコシル化を触媒することが明らかになった。また、そのうち1つにはtZを基質とする同活性も認められた。これらの遺伝子を各々異所的に過剰発現する形質転換イネの葉身では、cZOGまたはcZROG蓄積量の増加傾向が認められた。以上より、過剰発現させた3遺伝子の発現産物は、in vivoでcZ型CKのO-グルコシル化を触媒すると考えられる。また、これら3つのうち、2つの過剰発現イネでは、地上部の半矮性や矮性などの表現型が観察された。遺伝子発現解析の結果とあわせ、cZ型CKのO-グルコシル化機構の役割について考察する。