日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

金網フェンスを飲み込みながら肥大成長した樹幹の内部構造と肥大の力の推定
*泉井 桂藤井 達夫上村 博山本 衛
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0194

詳細
抄録
樹木がまだ若い時期にひし形金網のフェンスを通り抜け、その後の肥大成長によって樹幹が網目のサイズより大きくなり、ついに金網を飲み込むようにしながら成長を続ける様子はしばしば目撃される。しかしこのような樹幹に関する詳しい研究は未だないようである。われわれはこのような部分を含む切り株(アキニレ)を入手した。直径は約25cmで、幹と金網の面との角度は約38°であった。まず、1)X線写真では、幹の内部の金網はまったく失われたり腐食されたりしておらず、木は表皮の切断と再結合を繰り返しながらフェンスの針金を飲み込むように成長したことが初めて確認された。2)X線CT法によって、金網の面に直角の方向から1mm間隔で撮影した断層写真では、針金を飲み込んだあとの年輪の乱れとその数年後の回復の様子が示された。3)機械工学の手法である「3点曲げ試験法」により、最初に金網を通り抜けた幹がフェンスの針金((JIS G 3543V-GS2)を変形させるのに発揮した力は、表皮が切断され始めた時点で最大約190 N (19.4 kg重)、それまでの変形に要した仕事量は約2.3 Jと推定された。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top