抄録
モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、光化学系I循環的電子伝達活性(CEF-PSI)の生育光環境応答の解析を行った。シロイヌナズナを、弱光(LL)下、3週間生育させた後に、強光(HL)環境に移した。光合成電子伝達活性は、クロロフィル蛍光測定による光化学系II(PSII)量子収率(QY(PSII))解析およびP700測定による光化学系I(PSI)量子収率(QY(PSI))解析により評価された。CEF-PSI活性は、QY(PSI) - QY(PSII)により評価された。HL遷移後、経時的(24, 48, 96 h)に、光合成電子伝達活性が評価された。HL遷移後96 hまで、経時的にFv/Fmの値が0.82から0.78へと低下した。定常状態の光合成条件下、チラコイド膜PQの酸化還元レベルを示すクロロフィル蛍光パラメーターqLおよび光化学系IIの熱散逸能を示すクロロフィル蛍光パラメーターNPQの値が増大した。P700の酸化型の割合([P700+]/[P700]total)が増加した。CEF-PSI活性の増大が観測された。さらに、最大のCEF-PSI活性を与えるqLおよび[P700+]/[P700]totalの値が増加した。これらの結果は、光合成電伝達系の酸化還元レベルがCEF-PSI活性を調節することを示唆する。