抄録
葉緑体はオートファジーにより進行するRCB経路により部分分解を受ける。これまで私たちはシロイヌナズナ切離葉において栄養要因がRCB形成に及ぼす影響を解析し、葉の糖含量がRCB形成を制御する重要な栄養要因となること、RCB形成を特異的に制御する機構が存在することを示唆した。本研究では糖がRCB形成に及ぼす制御作用をより詳細に解析するために、デンプン合成が不能な変異体(pgm, adg1)、デンプンを過剰蓄積する変異体(sex1, mex1)の葉を用いてRCB形成を解析した。これら変異体は明暗周期環境では生育遅延を示し、その遅延は連続光下では見られないことが知られている。そこで連続光及び明期14時間の2条件で評価を行った。連続光条件ではsex1、mex1で野生体の約5倍のデンプンが蓄積しており、pgm、adg1では検出されなかった。このような葉を切離しRCBを検出、測定すると、sex1、mex1で有意に減少、pgm、adg1では増加した。明期14時間条件では展開期から老化葉まで生育を通したRCB形成を評価した。sex1、mex1におけるRCB形成が野生体を上回ることはなく、pgm、adg1では展開期から成熟葉にかけて野生体を大きく上回るRCBが検出され、最大値の比較においても有意に上昇していた。以上の結果は糖含量がRCB形成の重要な制御要因となることをより明らかに示す結果である。