抄録
新規のmonogalactosyldiacylglycerol (MGDG)合成酵素遺伝子を緑色硫黄光合成細菌Chlorobaculum tepidum (近年Chlorobium tepidumより改名)から単離した。この遺伝子mgdAは、分子量約49kDaのタンパク質をコードしており、緑色硫黄細菌に広く保存されていた。大腸菌で発現したMgdAは、UDP-Galactoseを基質としたMGDG合成活性を示した。MgdAは現在までに同定されたMGDG合成酵素とは一次構造上相同性が無く、新規のMGDG合成酵素と考えられた。C. tepidumのmgdAの変異体は単離できず、この遺伝子は生育に必須の遺伝子と考えられた。
葉緑体局在配列を付加したMgdAをシロイヌナズナのMGDG合成酵素変異体に導入したところ、MGDG量が野生型ほどに回復した。しかしながらその相補体は、クロロフィル量の減少、葉緑体構造の異常、不稔性、頂芽優勢の破綻、花の形態の異常等の表現型を示した。このことは植物型MGDG合成酵素の、未知の機能の存在を示唆している。その機能を議論する。