抄録
マメ科植物には、潜在的医薬品資源として重要な化合物群である多様なトリテルペノイドサポニンが含まれることが知られているが、生合成に関わる遺伝子解析はこれまであまり進んでいなかった。マメ科薬用植物カンゾウが生産するグリチルリチンの生合成経路において、出発物質であるbeta-amyrinの11位の酸化に関わるP450; CYP88D6と、30位の酸化に関わるCYP72AサブファミリーのP450(仮称CYP-A21)が明らかにされている。そこで、タルウマゴヤシの公開ESTデータベースを参考にCYP88D6およびCYP-A21ホモログの全長cDNAを単離した。これらのcDNAをbeta-amyrin合成酵素遺伝子とともに導入した酵母の酢酸エチル抽出物をGC-MSにより分析し、beta-amyrin酸化物の有無を調べた。その結果、CYP-A21と75.5%のアミノ酸配列同一性を示すCYP-A21ホモログの一つを導入した酵母では、beta-amyrinの30位水酸化体である30-hydroxy-beta-amyrinおよびカルボン酸である11-deoxoglycyrrhetinic acidが検出された。また、CYP-A21ホモログとCYP88D6を同時に導入した酵母からは、グリチルレチン酸も検出された。現在、他のP450との組み合わせによる天然・非天然トリテルペノドの創成に取り組んでいる。