抄録
種子は,内部の胚を紫外線から保護するために,種皮に二次代謝産物であるフラボノイドを集積している.シロイヌナズナは内珠皮第1層の細胞の液胞内に大量のフラボノイドを蓄積しており,そのため種皮は通常茶褐色を呈している.フラボノイド集積に異常を示す変異体は,種皮が白くなることからtransparent testa(tt)と呼ばれ,これらの変異体の解析からフラボノイド合成の主要経路が解明されてきた.しかし,フラボノイドの最終産物を液胞に集積するための分子機構については不明な点が多い.我々は,液胞へのタンパク質の選別輸送変異体の効率的な選抜方法GFS (Green fluorescent seed)法を開発してきた(1),原理は,小胞体で合成された液胞型GFPが,輸送装置の異常によって細胞外に分泌されると種子が緑色蛍光を発するという発見に基づいている.このgfs変異体プールの中から,種皮の色が薄くなっている変異体を選抜し,gfs9変異体と命名した.gfs9変異体は,種子貯蔵タンパク質の液胞選別輸送にも異常を示した.これまでに,色素フラボノイドの蓄積と液胞選別輸送の両方に関与する遺伝子は報告されていない.GFS9は新規液胞選別輸送因子として,フラボノイド集積に関与すると考えられる.
(1) Fuji et al. (2008) Plant Cell, 19, 320-332.