抄録
アントシアニンは、糖やアシル基により種特異的な修飾がなされている。アントシアニンの配糖化において、ウリジン二リン酸 (UDP)-糖を基質とした UDP-糖依存型配糖化酵素 (UGT) による糖転移反応が数多く報告されているが、未だメカニズムが解明されていない糖修飾反応が存在する。カーネーション花弁の主要色素は、3 位と 5 位が配糖化され、糖にさらにリンゴ酸が結合して環状化したアントシアニンであることが明らかにされている。3 位の糖は UGT により転移されることが報告されている一方で、5 位配糖化に関しては植物体からの粗抽出における酵素活性、酵素遺伝子ともに見出されていない。今回、カーネーション花弁の粗抽出中において、cyanidin 3-O-glucoside を受容体、カーネーション花弁の 50% エタノール抽出液を供与体として酵素反応を測定したところ、アントシアニン 5 位配糖化酵素活性を検出することに成功した。酵素反応液を HPLC で解析した結果、生成物のリテンションタイムとスペクトルは cyanidin 3,5-diglucoside のそれと一致した。この結果は、カーネーションン花弁のアントシアニン配糖化において、UDP-糖とは異なる糖供与体が存在することを示唆した。この研究は生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業により行った。