日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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オーキシン依存的な細胞分裂周期と核内倍加周期の切り替えによる細胞分化制御
*石田 喬志安達 澄子吉村 美香清水 皓平梅田 正明杉本 慶子
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p. 0253

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抄録
多細胞生物におけるある種の細胞群では、発生の過程において細胞内DNA量の増幅がキープロセスの一つとなる。細胞分裂を伴うmitotic cell cycleでは細胞が増殖し、endocycleでは分裂が起こらずに染色体の増幅のみが行われDNA量が増大する。幹細胞は細胞そのものが小さいまま維持されるが、endocycleを経た細胞では一細胞あたりのDNA量と相関するように細胞容量を拡大させることからこの細胞周期の切り替えは分化制御の重要な過程の一部であると考えられる。この二つの細胞周期を発生段階に応じてどのように切り替えているのかは細胞分化を理解する上で重要な問題である。我々はシロイヌナズナを用いた最近の研究から、TIR-AUX/IAA-ARFによるオーキシンシグナル伝達機構がこの制御を担っていることを明らかとした。すなわち、mitotic cell cycleの維持には高レベルのオーキシンシグナルが必要であり、オーキシンシグナルの低下によりendocyleへの移行が起こる。さらに、根端メリステムでは高レベルのオーキシンシグナルが細胞周期制御因子群の活性を支持し分裂組織を維持していることを明らかとした。これらの結果は、オーキシンシグナルが細胞周期関連因子の活性制御を通じた分化状態の切り替えを行い、これが細胞分化の最終的な発露に必要な細胞内過程であることを強く示唆するものである。
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© 2010 日本植物生理学会
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