抄録
環境ストレス下では多くの遺伝子が発現誘導され、環境ストレス耐性に関与していると考えられている。モデル植物であるシロイヌナズナ、イネ、ダイズは、全ゲノム配列が完全解読され、多くの完全長cDNAが単離されているため、転写開始点を推定してプロモーター領域を解析することができる。さらに、これらの植物は、44Kのオリゴアレイを用いて、網羅的に遺伝子発現解析を行うことができる。
本研究では、シロイヌナズナ、イネ、ダイズにおける低温及び乾燥誘導性遺伝子とプロモーターを比較解析して、遺伝子発現調節に関与すると考えられる遺伝子とプロモーターの保存領域を同定した。具体的には、1. ダイズゲノム情報を利用して新規44Kオリゴマイクロアレイを作製した。2. 低温及び乾燥処理したシロイヌナズナ、イネ、ダイズからRNAを抽出して、44Kオリゴアレイを用いて低温及び乾燥誘導性遺伝子を同定した。3. 同定した遺伝子を系統分類して比較解析を行った。4. 同定した遺伝子の転写開始点から上流の1000 bp(プロモーター)を選抜した。5. 選抜したプロモーターと無作為に選抜したプロモーターを比較解析して、低温及び乾燥誘導性遺伝子のプロモーター領域に特徴的な配列を同定した。これらの解析からモデル植物の低温及び乾燥誘導性遺伝子群の発現調節メカニズムを推測した。