日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ハイパースペクトル画像解析に基づくシロイヌナズナ主要色素の非破壊的定量技術の構築
*松田 修田中 彩子射場 厚
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p. 0296

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抄録
植物個体の色(広義には分光反射特性)は、形態と並ぶ主要な可視表現型であるとともに、個体の生理的状態を示す有用なバロメーターである。実際に、葉の主要色素であるクロロフィル、カロテノイド、アントシアニン等の代謝系は、発生段階や生育条件に応じて厳密に制御されており、植物の環境適応において重要な役割を果たしている。従来、植物色素を定量する際には、組織の破砕や抽出液の吸光度計測のため、多段階の実験操作が必要であった。また、これらは破壊的操作であるため、時系列的な色素組成の動態を解析することや、色素定量後の試料を他の生理的パラメーターの計測に用いることは不可能であった。近年のポストゲノム研究では、表現型の現出に至るゲノム機能の発現過程を解明するため、表現型を定量的に記述する手法の確立が望まれている。主要可視表現型の一方である形態については、3次元モデリングによる定量化手法の開発研究が進められ、その応用的成果も報告されているが、色を対象とした精密かつ組織的なフェノーム研究は未だ着手されていない。本発表では、色を非破壊的かつ効率的に定量化する手段として、ハイパースペクトル画像の利用可能性について紹介する。シロイヌナズナ研究における適用事例として、葉における主要色素の組成と分布を可視化するためのシステム開発の現況とともに、新規突然変異体のスクリーニングにおける同システムの利用実績について報告する。
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© 2010 日本植物生理学会
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