抄録
マメ科植物と根粒菌が共生を行う際に,感染糸と呼ばれる管状構造を通り根粒菌が根毛先端部から侵入する.ミヤコグサの実験系統であるB-129 GifuとMG-20 Miyakojimaでは感染糸数が異なる.また,両系統は茎色が異なっており,アントシアニン含量の違いにより赤色(B-129)または緑色(MG-20)を呈する.B-129とMG-20との組換え自殖系統(RIL)を用いた複合区間マッピングの結果,感染糸数を制御する量的形質遺伝子座(QTL)が第5染色体南側(QTL1)と第2染色体北側の茎色遺伝子座(VIC6)近傍(QTL2)に見出された.また,各RIL系統の感染糸数,莢幅,一莢粒数,茎色との間に有意な相関関係がみられた.B-129のEMS処理により得られた茎色遺伝子座の変異体(vic6-1)は,野生型B-129との比較において,感染糸数,莢幅,一莢粒数,茎色いずれもMG-20と類似した性質を示した.すなわち,感染糸数の系統間差の一部はVIC6の遺伝子型で説明できることが明らかとなった.エチレン生合成阻害剤および前駆物質処理が与える影響を両系統で比較した結果,感染糸数を最大にする至適処理濃度が異なり,また,MG-20のエチレン内生量がB-129と比べて低いことが示唆された.QTL1およびQTL2の遺伝子型が与えるエチレン内生量への影響についても報告する予定である.