日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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葉緑体タンパク質CASはMAMP誘導の気孔閉鎖運動に関与する
*植村 周平野村 裕也中平 洋一椎名 隆
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p. 0310

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抄録
病原体に攻撃された植物は、基本免疫応答を発動する。例えば、気孔は病原菌が感染する際の主要な侵入経路であるが、植物は病原体を認識すると素早く気孔を閉じてその侵入を阻止する。植物は、病原体に保存された分子パターン(MAMPs)を細胞膜上のレセプターでまず認識し、続いて活性酸素種(ROS)、一酸化窒素(NO)、ABAなどを介して、気孔閉鎖を起こすと考えられている。葉緑体はROSやABAの生成に深く関係するオルガネラであるが、基本免疫応答における役割はよくわかっていない。我々は,MAMPの一種であるflg22やキチン等のエリシターが、葉緑体ストロマCa2+濃度の一過的上昇を数分内に引き起こす事を見いだした(小森他 2009年度植物生理学会年会)。これは葉緑体が非常に早い段階で細胞外の病原体の存在を認識できる事を意味する。本研究では、葉緑体局在Ca2+結合タンパク質CASに注目し、MAMP誘導の気孔閉鎖と防御関連遺伝子群の発現応答における葉緑体タンパク質CAS の役割を評価した。その結果、cas変異体では、MAMP誘導の気孔閉鎖が大きく抑制される事、更にPR-1等の防御関連遺伝子の発現が異常になる事を見いだした。これらの事実は、葉緑体が気孔閉鎖などのMAMP誘導の基本免疫応答に重要な役割を果たしている事を示唆している。
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© 2010 日本植物生理学会
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