抄録
MAPKカスケードは真核生物に広く保存されているシグナル伝達系の一つである。植物でも、環境ストレスや病原菌応答、ホルモンシグナル、細胞分裂のシグナル伝達において、重要な役割を果たす事が報告されている。シロイヌナズナにはMAPKが20遺伝子存在し、4つのグループ(A-D)に分類される。中でもグループDはもっとも大きいサブグループを形成する。グループDのMAPKは、MAPKKによるリン酸化部位が植物にしか存在しないTDYモチーフを持ち、C末端が長いという特徴的配列を持つ。本研究では、グループDの一つであるMPK8に着目して解析を行っている。酵母mpk1変異株を用いた解析から、MPK8がMAPK活性を持つことを明らかとした。またYeast two-hybrid、BiFC assay、in tube assayの結果からMPK8はカルモジュリン(CaM)と特異的に結合し、カルシウム依存的に活性化されることを明らかとした。さらにCaMによるMPK8の活性化には、TDYのリン酸化は関与しないことをin vitroにおいて示した。一方、MPK8は既存のMAPKKであるMKK3によっても活性化され、CaM,MKK3-MPK8は傷害シグナルに関与することも明らかとした。CaMとMKK3の両方で活性化されるMPK8の制御機構について議論する。