抄録
野生種スイカはカラハリ砂漠に自生する砂漠植物で、乾燥ストレスに対し強い耐性を示す。野生種スイカは乾燥ストレスを受けると一過的に根の成長を促進させ、根系が発達することが知られている。これは乾燥ストレス下において、土壌深部の水分を効果的に吸収するための応答であると考えられる。一方、野生種に比べて乾燥耐性能の劣る栽培種スイカではこの現象は見られない。このことから、乾燥ストレスに応答して根の成長を促進させる分子機構が、野生種スイカに特異的に存在すると考えられる。この分子機構に関与する遺伝子群を探索するために、マイクロアレイ解析により野生種と栽培種スイカの根における遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、8,069遺伝子の中から野生種において特異的に、乾燥ストレス時に発現量が上昇する79遺伝子を単離した。この遺伝子群の中には、zinc finger型やmyb型の転写因子が含まれていた。定量的PCR解析により、これらの転写因子は根の伸長促進に先駆けて発現が上昇することが見出された。これらの転写因子は、乾燥ストレスに応答して根の伸長促進を制御する分子機構に関与している可能性が示唆される。現在、野生種および栽培種スイカの毛状根を用いて、上記因子の機能解析を試みている。