抄録
本研究ではイネのオゾンによる収量低下に関与する遺伝子座を同定する目的でササニシキとハバタキに由来する染色体断片置換系統群(CSSLs)を用いてQTL解析を行った。39系統のCSSLs及び両親品種を、外気区(平均オゾン濃度32ppb)及びオゾン添加区(平均オゾン濃度77ppb)において栽培した。QTL解析に先立ち親系統の解析を行った。葉のオゾンによる可視障害はササニシキでのみ観察することが出来た。また光合成速度、気孔コンダクタンス、蒸散速度の値に対するオゾン影響は見られなかった。登熟後、イネの収量を比較したところ、ハバタキにおいてオゾン暴露により精籾数が有為に低下していた。またオゾン暴露により桿長、一次枝梗数、登熟歩合、種子1000粒重がハバタキにおいて有為に低下していた。以上の結果、オゾン暴露によりハバタキにおいて収量が低下すること、その原因として桿長、一次枝梗数、登熟歩合及び種子1000粒重の減少の関与が示唆された。これらの要素のうち桿長、一次枝梗数ついてCSSL系統群を用いたQTL解析を行った。その結果、第6染色体上にハバタキの一次枝梗数の増加に関与し、オゾンによりその影響が現れなくなるQTLを同定することが出来た。現在、登熟歩合、種子1000粒重に関与するQTLの同定を行っているところである。本研究は環境省地球環境研究総合推進費(Ba-086)の一環として行われた。