日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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葉緑体におけるアスコルビン酸ペルオキシダーゼによる酸化的シグナリングの制御機構
*田内 葵野志 昌広丸田 隆典田茂井 政宏薮田 行哲吉村 和也石川 孝博重岡 成
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p. 0325

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抄録
活性酸素種(ROS)はシグナリング因子として環境ストレス応答に必須の役割を担っている。高等植物において、主要なROSの発生源である葉緑体には、ストロマおよびチラコイド膜にアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(sAPXおよびtAPX)が局在している。葉緑体型APXのH2O2を介した環境ストレス応答への関与を明らかにするため、tAPXおよびsAPXの遺伝子破壊シロイヌナズナ(KO-tAPX、KO-sAPX)を単離した。強光ストレス下において、両破壊株では野生株よりも顕著なH2O2の蓄積が見られたが、H2O2応答性遺伝子群の発現レベルは抑制されていた。よって、葉緑体由来のH2O2はそれらの遺伝子群の強光応答をネガティブに制御する可能性が示された。次に、エストロゲン誘導型RNAi法を用いてtAPX発現の一過的抑制系を構築した。通常条件下において、tAPX発現を一過的に抑制(36~48 hr)させたところ、葉緑体タンパク質の酸化損傷が認められた。さらに、マクロアレイを行ったところ、種々の植物ホルモン、耐病性および細胞死に関連する遺伝子群がtAPXの一過的抑制に応答した。よって、葉緑体型APXはH2O2を介した植物ホルモン/環境ストレス応答の制御因子であることが示唆された。現在、KO-tAPXにおけるH2O2応答性遺伝子発現への植物ホルモンの影響について解析している。
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© 2010 日本植物生理学会
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