日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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水生植物ヒルムシロ属における熱ショック転写因子HsfA2の機能分化
*天野 百々江飯田 聡子小菅 桂子
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p. 0331

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抄録
ヒルムシロ属(ヒルムシロ科:単子葉類)はアマモ科の姉妹群で,水生の被子植物のなかで最も大きな群のひとつである.淡水域に分布するササバモは表現型可塑性を持ち,水中でも陸上でも生育できる.一方,その近縁種で淡水から汽水域に分布するヒロハノエビモは水中でしか生育できない.栽培実験より,これら2種では高温に対する耐性が異なり,ヒロハノエビモは高温馴化の能力がないことが明らかとなった.
熱ショック転写因子HsfA2はシロイヌナズナHsf遺伝子のうち最も強く高温ストレスで発現し,高温耐性(basal thermotolerance)および馴化による誘導耐熱性(acquired thermotolerance) の獲得に重要な働きをしている.ササバモとヒロハノエビモにおいてこの遺伝子を単離したところ,HsfA2aとHsfA2bの2種類が存在した.熱処理によってHsfA2aは両種で強く発現したが,HsfA2bの発現の有無には種差が見られた.ヒロハノエビモHsfA2bが発現しないのは,熱ショックエレメント(HSE)の配列などプロモーター領域の変異に起因する.馴化条件で長期間栽培したときのRT-PCRの結果より,ヒルムシロ属では,HsfA2aは高温耐性に,HsfA2bは誘導耐熱性に機能分化している可能性がある.
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© 2010 日本植物生理学会
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