日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの低温脱馴化過程に関与するRNAマスキング制御の研究
*中南 健太郎南 杏鶴中神 弘史田中 真帆諸澤 妙子石田 順子篠崎 一雄白須 賢上村 松生関 原明
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p. 0330

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抄録
越冬性植物は低温馴化過程において高度な耐凍性を獲得する.越冬後,植物は脱馴化と呼ばれる過程で耐凍性を解除し,生長を再開する.脱馴化過程は馴化過程と比較して短期間で起こる早い応答であり,そのメカニズム解明は植物の生長・発達を理解する上で重要である.しかし,脱馴化の分子メカニズムについては不明な部分が多い.そこで本研究では脱馴化メカニズムを解明するために,翻訳調節機構に着目し,RNAマスキング機構の探索と機能解明を目指した.RNAマスキングとは翻訳抑制によりmRNAを保持し,刺激により翻訳を開始する制御である.まず,RNAマスキングのターゲットを探索・同定するために,低温馴化時及び脱馴化時における遺伝子,タンパク質発現の比較解析をマイクロアレイ,2D-DIGEを用いて行った.ターゲットmRNAは、低温馴化時に転写されるが翻訳されずにmRNAの状態で保持され,脱馴化時に即座に翻訳されるものと考えられる.そこで,脱馴化特異的に発現量の増加するタンパク質の中から、対応するmRNAの発現パターンがタンパク質のそれと一致しないものを選抜した.その結果,幾つかのRNAマスキングのターゲット候補を見いだし,その中には1次代謝に関与するものが含まれていた.これは,植物が脱馴化時に生長・発達に必要なエネルギーの供給を即座に再開するシステムを有し,それが翻訳レベルで制御されていることを示唆している.
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© 2010 日本植物生理学会
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