抄録
現在、我々はグルココルチコイド受容体を利用した機能誘導系を用いて、全転写因子の過剰発現体系統の作出を試みている。本変異体系統は各転写因子を一種類ずつ過剰発現させたものであり、DEX処理により導入された転写因子の機能が誘導される仕組みになっている。我々はこれら変異体系統より、可視光に対する応答が異常になった変異体を単離した。この変異体は長日条件下で野生型よりも胚軸が徒長するものとして単離され、胚軸の徒長以外にも子葉面積の減少等の表現型が観察される。これらの表現型はDEXを添加する事により増強する事から、導入された転写因子の機能誘導が表現型の原因であると考えられる。本変異体の表現型のDEX濃度依存性を確認したところ、胚軸伸長は低濃度で徒長が見られるが、高濃度では野生型と変化がなくなった。しかしながら子葉面積はDEX濃度依存的に減少し、その後回復する事はなかった。本変異体の単色光及び、暗黒下における胚軸の表現型の観察を行ったところ、青色光、赤色光、遠赤色光条件下において、同様の表現型が確認された。しかしながら、これらの表現型は暗所では観察されなかった事から、本変異体は光特異的に矮化の表現型を示す変異体であると考えられる。本変異体には新奇のZinc fingerタイプの転写因子が導入されており、この転写因子は抑制因子であった。本発表では光シグナルにおける本転写因子の役割について議論する。