抄録
葉は光合成遂行の主要器官であるため、葉の光形態形成は重要であり顕著である。本葉を構成する葉身は、平面的に広がった形態が特徴的であり、その本葉の扁平性は光の影響を大きく受ける。これまで、青色光により扁平性は促進され、この青色光応答はフォトトロピン制御であることが報告された。一方、赤色光下で生育した植物では葉が裏側方向へ強く丸まる傾向が見られる。しかし、この現象に赤色光受容によって活性化されたフィトクロムが関与するか不明であった。
本研究では、葉の扁平性を抑制するフィトクロムの生理機能について調べた。シロイヌナズナ本葉は裏側方向へ若干丸まるが、phyB 機能欠損変異体及び、End-Of-Day Far-Red 処理によりフィトクロム活性が減衰した野生株本葉では扁平性が増加した。さらに、PHYB とフォトトロピンとの相互関係を調べるため phyBphot1phot2 三重変異体を作出したところ、phot1phot2 二重変異体が示す本葉が強く丸まる表現型は完全に抑圧された。これらの結果は、フォトトロピンによる扁平性の促進制御において、PHYB が抑制的に機能する可能性を示唆する。またphyB 変異体の影響は、35S::PHYB-GFP の導入によって回復した。以上の結果を踏まえて、葉の扁平性を制御するフィトクロムとフォトトロピンとの拮抗的相互作用について議論したい