抄録
BLUF (sensor of Blue Light Using FAD) ドメインはFlavin Adenine Dinucleotide (FAD) 分子を発色団として持ち、光合成遺伝子の発現調整、走光性、光驚動性の制御を行う青色光センサータンパク質として機能する。Synechocystis sp. PCC6803 のBLUFドメインタンパク質であるSyPixDの結晶構造は1.8Åの分解能で解明され、環状5量体が2つ重なった10量体構造が報告された。会合体形成にはPixEタンパク質が重要であり、PixE存在下暗条件でPixD : PixE = 10 : 5 の重合体が形成され、光照射でPixD 2量体とPixE 単量体に分解される。このような光分解反応がシグナル伝達を制御している可能性があるが、詳しい分解過程やシグナル伝達機構は不明である。暗順応させたSyPixDに150 Kで青色光を30分間照射し、その後光照射下で50 Kまで冷却した。10 Kで電子スピンエコー測定を行うとpeak-to-peak幅75 Gの1対の共鳴線をもつ対称的な信号(Pake’s doublet信号)が得られた。PixD内のFADH-Tyr間ラジカル対の形成を示している。PELDOR法を用いてラジカル対間の相対距離や相対角度を解析しSyPixD会合体内で各単量体がどのように配置するかを議論する。