日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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クロマチン免疫沈降法を利用したシロイヌナズナ葉緑体転写制御系の解析
*華岡 光正加藤 麻衣子東 美由紀田中 寛
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p. 0355

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抄録
葉緑体は独自のゲノムとその発現系を有しており、分化や環境応答に際した転写制御の解析が広く展開されてきたが、その多くは生化学、遺伝学的手法をベースとしている。しかし、前者ではin vivoでの機能の説明が難しく、また後者では転写因子の直接の制御の理解が難しい。さらに、必須遺伝子の場合や重複機能を持つ遺伝子が存在する場合は欠損の影響が明確ではなく、解析困難なケースも実際に多く見られた。これら問題点を解決する技術が、クロマチン免疫沈降(ChIP)法である。この手法は、細胞中のDNA-タンパク質間の結合を固定し目的のタンパク質の抗体で免疫沈降することで、in vivoでの転写因子の結合状態をモニターすることのできる画期的な解析法である。
我々は、このChIP法をシロイヌナズナの葉緑体転写制御研究に導入し、従来の手法では見えてこなかった新しい制御系の理解を目指している。実験系の有効性を検証するため、ストレス応答シグマ因子SIG5とそのターゲット遺伝子との関係をChIP法により解析した。その結果、psbApsbD BLRPなどのプロモーター特異的に、また強光などのストレス依存的にSIG5の結合が検出された。この結果は、ChIP法が葉緑体転写制御系の解析において有力なツールとなることを示唆しており、欠損株のアレイ解析では同定されなかった新規ターゲット遺伝子の有無についても報告する。
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© 2010 日本植物生理学会
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