日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナ種皮特異的ペルオキシダーゼはムシラーゲの放出に関与する
*國枝 正深澤 美津江西村 幹夫西村 いくこ
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p. 0367

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抄録
シロイヌナズナの種皮は,細胞壁と細胞膜の間に“ムシラーゲ”と呼ばれるペクチン性多糖を大量に蓄積する.吸水によって膨張したムシラーゲは,細胞壁を突き破り,種皮から放出される.放出されたムシラーゲは,種子の周りにゲル状のマトリックスを形成することで,発芽時の乾燥から種子を保護している.我々は,種皮形成を制御する植物特異的なNAC転写因子NARS1およびNARS2が,ムシラーゲの蓄積に関与することを明らかにした(1).nars1 nars2二重変異体において顕著に発現が低下する因子の中で,ペルオキシダーゼ(PER)に着目した.PERは,種子形成過程において,ムシラーゲ蓄積細胞に特異的に発現する.PER-GFP融合タンパク質のムシラーゲ蓄積細胞での挙動を観察したところ,PER-GFPはムシラーゲの放出時に破壊される細胞壁に限定して局在していた.一方,PER遺伝子のT-DNA挿入変異体では,吸水処理によるムシラーゲ放出に異常を示した.このper変異体のムシラーゲ放出異常は,細胞壁を緩める作用をもつEDTAやNa2CO3によって種子を処理することで回復した.これらの結果は,PERがムシラーゲ蓄積細胞の細胞壁の分解に関与することで,ムシラーゲ放出を促進する役割を担うことを示唆している.
(1) Kunieda et al., Plant Cell, 20, 2631-2642 (2008).
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© 2010 日本植物生理学会
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