抄録
我々はシロイヌナズナの核コード葉緑体タンパク質の機能解析を目的に、葉緑体タンパク質をコードする遺伝子にDsまたはT-DNAが挿入したタグラインの大規模収集を行った。表現型観察により得られた約200ラインの表現型異常変異体の表現型情報は、データベースを作成し一般に公開した(Chloroplast Function Database <http://rarge.psc.riken.jp/a/chloroplast/>)。それ以外の可視的な表現型が野生型と比べて異常がないホモタグラインは1,290ラインを得た。この収集したホモラインは、葉緑体タンパク質の機能解析のためのスクリーニングを行う上で、強力なツールであると考えられた。そこで本リソースを用いて、様々な濃度の試薬を加えた育成プレート上で生育させた生化学的測定スクリーニングにより、薬剤に対して感受性または非感受性のいくつかのストレス関連の変異体の候補を単離した。その中から、酸化ストレスや浸透圧ストレス環境下で感受性が異なる6つの変異体を同定した。それらの多くが、光合成時に細胞質や細胞膜への損傷を引き起こす活性酸素を産出させるパラコートに対して異常な応答を示した。このスクリーニング結果から、ホモタグラインは、異常なストレス応答を示す葉緑体タンパク質変異体スクリーニングを行うためのツールとして有用であることを示すことが出来た。