日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

カツラ木部柔細胞の深過冷却機構におけるフラボノール配糖体の役割
*春日 純橋床 泰之荒川 圭太藤川 清三
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 480

詳細
抄録
北方落葉広葉樹の木部柔細胞は深過冷却と呼ばれる凍結回避機構により氷点下温度に適応している。これまで、この深過冷却機構は、木部柔細胞のプロトプラストが細胞壁の構造特性により脱水や植氷といった細胞外の氷晶の影響から隔離された微小な液滴として存在することで水の均質核形成温度(-40℃)まで過冷却を続けることによると考えられてきた。しかし、われわれの最近の研究により、細胞壁に傷害を与えることなく細胞の膜構造を破壊し、細胞内成分を漏出させると木部柔細胞の過冷却能力が低下することが明らかとなり、細胞壁の構造特性のみではなく細胞内成分も深過冷却機構に関与することが示唆された。そこで、北方落葉広葉樹のカツラ(Cercidiphyllum japonicum)の木部組織から抽出した可溶性成分から、過冷却を促進する成分の単離を試みた。その結果、溶液中で起こる氷核形成を阻害する4つの化合物を単離した。これらの化合物の構造解析を行ったところ、いずれもフラボノール配糖体であることが明らかになった。その中でもケンフェロール-7-O-β-グルコシドの活性が最も高く、氷核細菌(Erwinia ananas)を含む溶液の温度を1.0 mg/mLで9.0℃も低下させた。今後、これらの化合物の局在性や季節的な過冷却能力の変化に伴う蓄積量の変化を調べ、フラボノール配糖体が樹木木部柔細胞の深過冷却機構に果たす役割を検討する。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top