抄録
表層微小管は細胞壁のセルロース微繊維の配向を制御することで、細胞の伸長方向を制御すると言われている。しかし、表層微小管がセルロース微繊維の沈着方向を規定する機構については未だ不明な点が残されている。私たちはこれまでにケミカルバイオロジーの手法を用い、表層微小管とセルロース微繊維の平行性を乱す新規阻害剤コブトリンを発見し報告して来た。本研究では、そのコブトリンの標的因子を探索することを目的に、シロイヌナズナFOXライブラリから抵抗性変異体の探索を行った。その結果、レクチン様タンパク質、ポリガラクロナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼの3遺伝子を単離した。特に、後者2つはペクチン分解酵素であり、コブトリンとペクチンの関連性が伺われる。逆に、ペクチン合成酵素の過剰発現はコブトリンに対する感受性を高めることも分かった。また、培地中へポリガラクツロナーゼを添加することによりコブトリンの表現型が回復することも見出した。さらには、コブトリン処理によりメチルエステル化されたペクチンの局在が乱され、細胞表面に一様に広がってしまう様子が観察された。これらの結果は、コブトリンがペクチンかペクチン関連因子を標的にしている可能性を示唆していると考えられる。これらの結果から、表層微小管によるセルロース微繊維の配向制御におけるペクチンの役割について議論する。