抄録
シロイヌナズナのANGUSTIFOLIA (AN)は、動物のCtBP(転写抑制因子)/BARS(ゴルジ体の維持因子)のホモログに相当する。ANは微小管の配向を介して、葉の細胞の横方向への極性伸長に関わる可能性が示唆されている。ANはそのクローニング以来これまで、転写抑制因子として機能すると考えられてきた。しかし近年、その見方に否定的な知見が多く報告されている。例えば我々自身、AN-GFPの細胞内局在性を再検討したところ核局在性は認められず、また、ANがショウジョウバエのCtBP変異体の表現型を相補しないことも明らかになった。さらに、植物型に固有のC末端に重要な機能があるとも考えられてきたが、それについてさえも否定的なデータが出つつある(本大会、樋口ら)。ANの分子機能を解明するためには、改めて、動物のホモログに関する知見とは独立に、予見なく機能解析を行なうことが重要である。我々は、AN-GFPがゴルジ体近傍のドット状の構造に局在することを見出している。今回は、その細胞内局在性のより詳細な観察結果と、an-1変異が膜構造に及ぼす影響について報告する。さらに、ANの相互作用因子の探索も行なっており、これらの結果を合わせてANの分子機能について考察したい。