日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

シロイヌナズナ切断花茎の組織癒合過程における植物ホルモンおよび転写制御因子の関与
*東 克也朝比奈 雅志山崎 貴司高木 優光田 展隆田坂 昌生森田 美代山口 信次郎神谷 勇治南原 英司岡田 清孝佐藤 忍
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0388

詳細
抄録
以前の我々の研究から、水平方向に直径の約半分まで切断されたシロイヌナズナの花茎では、主として髄組織の細胞が切断3日後から細胞分裂を開始すること、および細胞分裂の誘導にオーキシンが必須であることが明らかになった。マイクロアレイ法を用いた解析から、癒合部では切断1日後から3日後において、植物ホルモン関連遺伝子や転写因子の発現が特異的に上昇することが示された。これらの遺伝子の発現に対するオーキシンの影響を調べたところ、オーキシンによってAP2型転写因子の一種は負に、NAC型転写因子の一種は正に制御されていた。また、オーキシンのシグナル伝達に関わるAUX/IAAの機能が抑制された形質転換体では、癒合部における細胞分裂が阻害され、AP2型転写因子およびNAC型転写因子の発現に変化が生じた。さらに、エチレン合成に関わるACSや、ジャスモン酸合成に関わるLOXも、癒合部特異的な発現量の上昇を示した。化学物質や変異体を用いた実験から、AP2型転写因子はエチレンによって負に、ジャスモン酸によって正に制御されることが示唆された。CRES-T法を用いてAP2型転写因子またはNAC型転写因子の機能を抑制した形質転換体で癒合部における細胞分裂の阻害が見られたことから、花茎切断によって生じたオーキシン・エチレン・ジャスモン酸のシグナリングが、癒合部の細胞分裂に必要な転写因子の発現を制御していると考えられる。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top