抄録
ポリプレノールやドリコール等のZ,E混合型ポリイソプレノイドは全生物種内に普遍的に存在し、主に糖鎖生合成における担体脂質として不可欠な役割を担う。一方、高等植物の色素体中に存在するC50-60のZ,E混合型ポリイソプレノイドはその生理的意義が不明であった。我々はこれまでに、シロイヌナズナ由来AtCPT4が色素体に局在し、C50のZ,E混合型ポリイソプレノイド生合成を触媒することを明らかにした。そこで本発表では、色素体におけるZ,E混合型ポリイソプレノイドの生理的意義の解明を目標に、AtCPT4の生理機能解析を行った結果について報告する。
AtCPT4は長日条件下において光周期応答性の発現パターンを示した。長日条件下において、AtCPT4の遺伝子挿入変異体は野生型に比べ葉柄と胚軸が長い表現型を示したが、暗所下では野生型との差異は観察されなかった。また、この表現型はオーキシンの輸送阻害剤を処理することで抑圧された。さらに、atcpt4ではIAA6などのオーキシン誘導性遺伝子の発現が有意に増強されていた。これらの結果より、AtCPT4によって色素体で生合成されるZ,E混合型ポリイソプレノイドが、光応答性の生長制御に関与していることが示唆された。