日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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植物オートファジーはサリチル酸シグナリングを抑制し細胞死に歯止めをかける
*吉本 光希軸丸 裕介神谷 勇治草野 都大隅 良典白須 賢
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p. 0422

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抄録
オートファジーは、オルガネラを含む細胞質成分を液胞に輸送して分解する真核生物に普遍的な細胞内分解システムである。これまでの研究から、植物はオートファジー能を欠損すると、栄養状態が良いにも関わらず、老化が早まり、病原菌感染時に防衛反応として引き起こす細胞死を過剰に発生することがわかっていた。しかし、なぜオートファジーが不能となると、このような表現型を示すのか、そのメカニズムはこれまで謎であった。
最近、私たちはオートファジー能欠損植物(atg mutants)における細胞死促進の原因が、過剰なサリチル酸(SA)シグナリングであること、またそのシグナルによってオートファジーが誘導されることを発見した。atg mutantsの早老化による細胞死あるいは病原菌感染時に引き起こされる過剰な細胞死はSAシグナリングを阻害することで抑制された。一方、老化に関与しているといわれている、植物ホルモンのジャスモン酸やエチレン関連のシグナリングを阻害しても、細胞死促進は抑制されなかった。さらに興味深いことに、オートファジーはSAシグナルによって直接誘導されること、その誘導はSAシグナル伝達タンパク質NPR1に依存していることが明らかとなった。これらの結果から、オートファジーは、植物においてSAシグナリングの絶妙なバランスを取るための、ネガティブフィードバックループとして機能していると推測される。
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© 2010 日本植物生理学会
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