抄録
シアノバクテリア光化学系IIで200K以下の低温など正常な電子伝達が阻害された時、光照射で誘起されたカロテノイドラジカルと安定なチロシンDラジカルと電子電子2重共鳴で約3MHzの信号を観測した。これは両者の平均距離がおよそ29Aであることを示してい。カロテノイドは実際は長い鎖状の分子でありスピン密度が両端に亘って分布している。チロシンラジカルの六員環状のスピン分布はこれまで研究されており、またX-線解析より導かれた構造定数(文献1)は各炭素原子の位置や分子の方向を詳細に示している。上記の信号を解析してYDに対するカロテノイドラジカルの正確な相対位置とカロテノイド分子の方向を導くため、YDの結晶パラメータ、スピン分布をもとにまたカロテノイドのスピン分布を文献2より得られる値をいれ、まず相対距離を決定し、それから分子の方向を仮定したsimulationで結晶軸とYDに対する方向を導く。
カロテノイドはYZに近いものと2個あるが、更にYZラジカルをトラップしたものについてELDORを観測してactiveなカロテノイドを決定する予定である。
文献1. B.Loll et al. Nature 438(2005) 1038-1044
文献2. T. A. Konovalo et al. J. Phys. Chem. B2001 105 8361-8368