日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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D1:1とD1:3で構成されるThermosynechococcus elongatusの光化学系II複合体の分子構造と機能の比較
*杉浦 美羽Rappaport Fabrice加藤 祐樹Boussac Alain
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p. 0430

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抄録
Thermosynecococcus elongatusゲノムにはD1をコードする遺伝子が3つ存在し、通常の培養条件ではpsbA1が発現しているが(D1:1)、光ストレスを受けるとpsbA3が発現する(D1:3)ことが知られている。D1:1とD1:3の間では、360アミノ酸のうち21アミノ酸が異なる。我々はこれらのアミノ酸の違いがPSIIの機能と構造にどのような影響を与えるのかを調べるために、psbA1psbA2を破壊した組換え体を作製し、D1:1で構成するPSII、および、D1:3で構成するPSIIを単離して、それらの性質を調べた。
D1:3-PSIIの酸素発生活性はD1:1-PSIIよりも高い酸素発生活性を示した。S2QB-およびS3QB-電荷再結合時の熱発光はD1:3-PSIIの方が高温度に現れ、また、S2QA-電荷再結合時には、D1:3-PSIIではD1:1-PSIIとは異なるバンドが現れた。QBの近傍には両者の間で異なるアミノ酸があり、このアミノ酸が近くの脂質と相互作用している可能性が考えられる。また、殆どのD1では130番目のアミノ酸はEであり、PheoD1と水素結合していると考えられている。D1:3はEであるが、D1:1ではQである。分光電気化学的測定によりPheoD1/PheoD1-の酸化還元電位を調べたところ、D1:1では17 mV低いことが明らかになった。
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© 2010 日本植物生理学会
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