抄録
シアノバクテリアと原始紅藻の光化学系II(PS II)は、周辺アンテナの構造が異なるが、共通したコアアンテナ(CP43、CP47)をもち反応中心二量体を形成している。しかしこれらのタンパク質間で行われている励起エネルギー移動の経路は未だ十分に解明されていない。特にPS II反応中心二量体の単量体間での励起エネルギー移動の有無については殆どわかっていない。今回我々は好熱性シアノバクテリアThermosynechoccus.vulcanus、原始紅藻Cyanidioschyzon.merolaeの光化学系IIの単量体、二量体の4つの試料を対象に、ストリークカメラを用いた極低温時間分解蛍光測定を行いこの問題を調べた。測定の結果、二種類の生物の単量体、二量体の時間分解蛍光スペクトル間に(1)5Kではあまり差がない(2)77Kでは違いがある、という結果が共通で得られた。測定結果を定量的に評価するためにMulti-Exponential関数を用いたグローバル解析を行い、共通の時定数成分を抜き出し、Decay Associated Spectra (DAS)を算出した。これをもとに光化学系II内部の単量体間のエネルギー移動のモデルと、エネルギー移動過程を議論する。