日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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珪藻Chatoceros gracilisの酸素発生光化学系II複合体は不安定である
*長尾 遼鞆 達也榎並 勲池内 昌彦
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p. 0432

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抄録
近年、我々は海産性の中心目珪藻Chatoceros gracilisから酸素発生活性を保持した光化学系II複合体(PSII)の単離に成功した。このPSII(crude PSII)を298 K、暗所で数時間インキュベートしたところ、酸素発生活性の低下、クロロフィルの消失、PSII を構成する各ポリペプチドの分解といった現象が確認された。このことは、C. gracilisのcrude PSIIが失活しやすく不安定であることを示している。これら失活要因を除去し安定なPSII標品を得るために、crude PSIIを陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにかけ、さらなる精製を試みた。カラム精製により得られたPSII(pure PSII)は、集光性色素タンパク複合体fucoxanthin chlorophyll a/c-binding proteins (FCP)の大部分が除去され、2135 μmol O2 (mg chl)-1 h-1もの高い酸素発生活性を有した標品であった。このpure PSIIを25℃、暗所で数時間インキュベートし、crude PSIIと同様の解析をしたところ、pure PSIIではcrude PSIIのような失活がほとんど見られなかった。この結果は、pure PSIIの精製過程で、失活要因の大部分が除去されたことを意味する。
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© 2010 日本植物生理学会
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