日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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クロロフィル a , b および d のエピマー化速度の比較
*布留川 隼人大橋 俊介家村 達也奥田 将旭仲里 正孝岩本 浩二白岩 善博宮下 英明渡辺 正小林 正美
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p. 0435

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抄録
原核藻類Acaryochloris marinaはChl d を主要色素として酸素発生型の光合成を実現している。我々はこれまで、A. marinaが微量なクロロフィルとしてChl a, Phe aおよびChl d’を有することを明らかにしてきた。Chl d’ は光化学系Iの初発電荷分離体P740として、またChl aとPhe aは光化学系IおよびIIの一次電子受容体として機能している。
A.marina以外の酸素発生型光合成のPSIではChl aとa’ のヘテロダイマーがP700として機能している。Chl b は高等植物などのアンテナ色素だが、そのエピマーであるChl b’ は天然の光化学系には存在しない。その理由の一端を探るべく、Chl a’ , b’ および d’ のジエチルエーテル中でのエピマー化速度を比較・検討した。
その結果、光化学系に存在しないChl b’ のエピマー化速度は、Chl a’ およびd’ に比べて、非常に速いことを明らかにした。Chl a’ と Chl d’ とでは、Chl d’ の方がエピマー化が少し速い。すなわち、最もエピマー化の遅いChl a’ がP700として、次に遅いChl d’ がP740として機能している。エピマー化速度が非常に速いChl b’ は、生体内での制御が困難なため、植物はPSIのスペシャルペアとして利用できなかったと推測される。
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© 2010 日本植物生理学会
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