抄録
シロイヌナズナAtDUR3は、窒素欠乏状態の根で高く発現し、高親和型尿素輸送の中心的な役割を担う。AtDUR3の根における生理学的な機能は比較的明らかとされたものの、その生化学的な性質は不明な点が多い。シロイヌナズナの細胞膜タンパク質のリン酸化部位が網羅的に解析された結果、AtDUR3のY566とS568がリン酸化されうることが明らかとなった。その生化学的な意義を考察するためにAtDUR3に部位特異的変異を導入し、リン酸化、脱リン酸化を模倣した変異AtDUR3を作製した。この変異AtDUR3を尿素輸送能欠損酵母株に形質転換し、尿素を単一の窒素源とする培地上で生育を比較した。野生型と比較して、Y566Dは生育が早くなる一方、S568Dは生育が遅くなることから、Y566とS568が、リン酸化によって別々に制御される可能性が示唆された。また、Gateway System対応型のシロイヌナズナcDNAプラスミドライブラリを、スプリットユビキチンシステムのスクリーニングベクター系(Petr et al., 2004)へとBP反応、LR反応により変換し、AtDUR3 と相互作用するタンパク質をスクリーニングした。その結果、AtDUR3とプラスミドライブラリの両方を含んだ2倍体酵母約100万個から、栄養選抜により150個の陽性クローンを選抜し、解析中である。